丸竹ロッドとは
竹の種類

高野竹

矢竹

丸節竹

布袋竹

真竹

竹の採取
竹の乾燥
生地組
芽取り・袴取り
火入れ・矯め
穂先
継ぎ手
塗装
ガイドの取付
フィニッシュ













丸竹フライロッドのテーパーデザインの基本は、他のブランク素材とそれほど変わりはない。 しかしグラファイトやグラス、スプリットケーン等のロッドは目的のテーパーに合わせてブランクを成形するのに対して、 丸竹ロッドは自然に生えている直径とテーパーの異なる竹をいくつか組み合わせる事で目的のテーパーデザインを近似する。 このたくさんの竹からロッドに合ったものを選び出し組み合わせるパズルのような作業を生地組(または木地組、切組み)と呼ぶ。

フライロッドのアクションは特に渓流用の低番手ロッドにおいては、ファーストから超スローアクションまで人により相当好みの差があるよ うだ。丸竹フライロッドは単にパーツを組み合わせるロッドビルディングとは違い、使う竹の選択で自分の好みに合わせた自由なロッドアクションを作 ることができる。特殊なコンセプトで作られたロッドが好みの人、市販のロッドアクションに満足できない人は、とことん自分の好みのロッドアクション を追求するのも面白いかもしれない。


ロッドアクション


静的特性

フライロッドのデザインは一般にキャスティングを中心に考えられる。短い距離ではロッドの振り幅が狭くフライラインの負荷はほとんど ティップだけに 乗る。そしてフライラインを伸ばし負荷が増すに従い、ティップからミドルに移る。さらにフライラインを伸ばし、ロッドの限界近くまで負荷をかけるとバット まで曲がりフライロッド全体でフライラインを飛ばせるのが理想のアクションとされる。スローテーパーではフルフレックスアクション、ファーストテーパーは プログレッシブテーパーと呼ばれる概念だ。ロッドを曲げたときのベンディングカーブはバットからトップに行くに従いきつくなっていき放物線に近似されるた め、パラボリックアクションとも呼ばれる。

実はこの考え方、対象魚や竿の使い方は違うのだが、へら竿に似ている。へら竿はかけた魚の引きに応じて負荷の中心が穂先から手元に移っ ていくように デザインされている。フライロッドより先調子で柔らかいが曲げてみると似たようなベンディングカーブを描く。へら竿で使われる、矢竹の手元、高野竹の穂持ち、真 竹の削り穂の組み合わせはそのままフライロッドに応用が可能で、私の丸竹フライロッド作りもへらの竿を強く意識したものとなっている。

この特性を実現するためには一定の割合で細くなるストレートテーパーではなく、バット部はスローで、ティップに向かうほどテーパーがきつくなるデザインが 必要で、テーパーを極端なイメージで表現すると、円錐型ではなく砲弾型となる。

ロッドテーパー

バット部分

背が高くテーパーの緩いを使う。特に並継ぎにする場合は継ぎ部分に直径差約1mmの段差によるテーパーが加わるため、ほとんどテーパー のない竹を選 ぶことになる。


トップ部分

先端に向かって、ある程度のテーパーが必要なので背が低くバットよりテーパーがきつめの竹を選ぶ。ティップまで丸竹で作る場合は、テー パーのきつい 丸節竹や布袋竹が向いている。へら竿は高野竹に真竹を削った削り穂を継ぐことによって自由なテーパーを作り出していて、これはフライでも応用できる。並み 継ぎのマルチピースロッドを作る場合は、継ぎ手部分の段差でテーパーが得られるので、うまく組み合わせれば、比較的スローテーパーの竹をティップに使うこ とができる。


ベンディングカーブの確認

生地組みにある程度の経験が必要で、最初のうちは狙ったアクションを出すのに苦労されると思う。竹の太さを計ったり、曲げたりするだけ でなく、ロッ ドに使う竹が決まったら、粘着テープ等で仮止めして実際に組み立て、壁などに押しつけて曲がり具合をチェックしたり、軽く振って感触を確かめると失敗が少 なくなる。不要な部分を切り落とすときは、使う部分より一節位長めに切っておくと次の行程の「火入れ・矯め」が行いやすい。


動的特性

フライロッドのアクションを決める要因はベンディングカーブだけではなくキャスティング中の動的特性も重要だ。フライキャスティングの スイングは ロッドを少しずつ加速してポーズの瞬間に急激に力を入れ止めるが、このポーズ前後の動的特性が特に重要だ。ロッドティップはフライラインの負荷を効率よく 乗せられるよう直線的に動かなければならない。ポーズ後、曲がったロッドが元に戻る力でフライラインが飛ばされるが、このときの返りのスピードが速いほど フライラインのスピードも速くなる。フライラインを飛ばし終わり無負荷となったロッドティップは反動で前方に大きくおじきをしてから元に戻るが、この振動 は1回で治めないといけない。そうしないとフライラインが波打ってパワーロスが生まれる。この一連の動きがスムーズに行えるのが良いフライロッドとされ る。もっとも、スムーズなキャスティングは竿の特性より、キャスティング技術に依存する部分の方が大きいのだが、竿によりかなりの差があることも事実だ。

理論的には、ロッドの返りと振動の減衰は、素材が軽くまたは硬いほど早く、重くまたは柔らかいほど遅くなる。一般にはグラファイトカー ボンなどの軽 くて硬い素材が優れているとされるが、実際はそう単純ではない。キャスティング中のフライロッドはフライラインの負荷だけでなくロッド自身の重量でも曲が る。その特性を上手く利用したスプリットケーンのバンブーロッドには、重い素材にもかかわらず、まるでロッドが勝手にフライラインを飛ばしてくれると錯覚 するほど扱いやすいものがある。この動的特性は感覚的な要素が多いためベンディングカーブのような数値化が困難だ。丸竹ロッドも同じで実際に振って確かめ るしかないだろう。同じようなベンディングカーブでも竹の種類が違うと全く感触の違うフライロッドに仕上がる。私は、丸竹ロッドの動的特性について下記の 2種類の異なる考え方を持っている。


硬く強く

高野竹など硬く肉厚の竹を使うと、細身で丈夫なロッドを作ることができる。スプリットケーンのバンブーロッドほどではないが、幾分ス ローアクション のロッドに仕上がる。粘り強くトルクがあり、ロッドを曲げるのにロッド自重も利用できるため、ゆったりしたテンポでキャストができる。


軽く早く

丸節竹などの軽く肉薄の竹を使うと、軽く軽快なアクションのフライロッドを作ることができる。肉薄なため幾分弱いが、上手く使うと軽く 返りが早い、 グラスとカーボンの中間位のアクションになる。

さらに、これら性質の違う竹を組み合わせることでいろいろな生地組が可能となる。丸竹で竿を作る場合、和竿の技術は非常に重要で多くは それらに従う ことのになるが、丸竹によるフライロッド作りはまだ始まったばかりで和竿のように完成されたものではない。そのため自由な発想でいろいろなことを試してみ てはどうだろう。ひょっとしたら新しい発見があり、銘竿が完成するかもしれない。


節の位置

竹を選ぶときは、長さとテーパーだけではなく、継ぎ手を作るための節の位置を考慮しなければいけない。

並継ぎ


玉口(継ぎ手メス側)

コミの納まる部分は節と芽のくぼみを避ける。節間の短い竹の場合は節の下ぎりぎりで切る

コミ(継ぎ手オス側)

テーパー部分はキャスティング中に抜けないよう十分な長さとする。私はコミの元部分の直径の約12倍の長さにしている。節 間の長さがテーパー部分より短い 場合はテーパーの先端部分に節がくるようにする

並継ぎ

制限

コミ部分の強度を上げるため、玉口に納まるコミの元部分は削らず竹の表皮を残し、穂先側の竹の直径と同じにする。また玉口の強度を上げ るためには玉 口の肉厚を厚くする必要があるため、穂先側と手元側の竹の直径差はできれば1mm以上、細い穂先部分の継ぎでも最低0.6mm以上必要。直径差がこれより 少ないと玉口が紙のように薄くなり弱くなってしまう。直径差が少ない竹を継ぐ場合は並継ぎより印籠継ぎの方が優れている。

並継ぎ

玉口の先端部分の厚さ=(手元側玉口の直径−穂先側コミの直径)÷2


 

印籠継ぎ


玉口

コミの納まる部分は節と芽のくぼみを避ける。節間の短い竹の場合は節の下ぎりぎりで切る。私は、コミのテーパー部分の長さ を、印籠元径の約12倍の長さに している。

印籠穂先側

印籠芯の穂先側接着部分は節を避ける。接着するため、コミ部分ほど長くなくて良い。私は印籠芯元径の5倍位の長さにしてい る。

印籠芯コミ

印籠芯は竹の根本側がコミの元となる向きにして、竹のテーパーをコミのテーパーに利用する。芯材の節間の長さが印籠芯コミ 部分のテーパーの長さより短い場 合はコミの先端部分に節がくるようにする。

印籠継ぎ

長さ

継ぎの長さを同じ仕舞寸法に納めようとすると、それぞれの竹の長さは継ぎ手や口栓の長さを考慮した計算が必要で結構ややこしくなるので EXCELの計算表を作った。最初のものは、マルチピースでも、コミ(継ぎ手)の長さを全て同じで計算していたが、竹の直径によりコミの長さも変るため、 それぞれの継ぎでコミの長さを変えられる式に変更した。

EXCELの計算式