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アマゴの塩焼きで晩酌

フライフィッシングの世界では、釣った魚を逃がすキャッチアンドリリース(C&R)する人が増えているようだ。私も渓流の魚はリリース している。しかしそれはつい最近になってからのことで、以前は釣った魚を持ち帰って食べていた。私は魚が大好物で、釣った魚を晩酌の肴にするのが楽しみ だった。特にアマゴの塩焼きは家族みんなの好物で、渓流釣りに行くときは数匹のアマゴを持ち帰ることにしていた。しかし、あるきっかけにより、私もC&R をするようになった。

きっかけ

2000年の冬に妻が病気で入院してしまった。突然訪れた事態に、3才と8才の二人の娘を抱え仕事と育児の両立ができず途方に暮れたの だが、親に応援をたのんでから少し余裕ができ、奈良県の天川に3月解禁直後に釣りに行った。川は前日の雨の笹にごりでコンディションは悪くないはずなのだ が、汗ばむほどの陽気から雪が降り出す急激な天候の急変が原因か、ハッチが全くなく、ボウズになってしまった。そのとき、「妻が命を失う危険もある病気と 闘っている最中に自分は一体何をしているんだろう?」と反省し、以後渓流の釣りでは魚を殺して持ち帰るのは止めようと心に誓った。私のC&Rはそんな一種 の願掛けみたいなもので、特に理屈があったわけではない。まあ、釣り自体を止めようとせず釣った魚を逃がそうと考えてしまうところが身勝手なのだけど (笑)。 幸い妻は3ヶ月後に退院できたが、それは今でも続いている。


C&Rを行ってみて

ひょんなことから始めたC&Rだが、やってみると具合が良い。

  1. 魚籠、クーラーバックの装備や氷の調達が不要なため準備が簡単。
  2. 釣り上げた魚の保存を考える必要が無いので釣りに専念できる。
  3. 家族の食べる数をそろえなければいけないプレッシャーがなくなり釣りに余裕ができる。
  4. 疲れて帰宅してから魚をさばくうっとうしい作業がない。

と晩酌の肴をあきらめれば、釣りそのものに専念でき、これまで以上にフライフィッシングを余裕を持って楽しめるようになった。動機は決 して自慢できるものではなくとも、C&Rは私にとって充分意義のあるものになった。ちなみにそのとき願掛けしたのは渓流の魚だけなので、管理釣り場のニジ マスや海の魚は時々持って帰ることもある。(ほんと身勝手!)

C&Rの勧め

私のように理屈の通らない私的な動機は別にしても、C&Rには肯定・否定をふくめ、さまざまな意見があるようだ。

C&Rを釣魚の再利用と再生産による合理的な河川の運用手段と考える人もいれば、行為そのものを崇高なものとたたえる人もいる。単に魚 が嫌いだったり、さばくのが面倒なので持ち帰らない人もいる。

一方で、魚食の習慣の無い西洋人の猿まねと軽蔑したり、食べることで完結させなければ釣りをする意味が無いと職漁師的な価値観で否定す る人もいる。払った入漁料を上回る釣果を上げて元を取らないと気が済まない人や、河川は公の場だと漁協の存在さえ否定して入漁料を払わず魚を持ち帰る人 だっている。

C&Rによる魚資源の再利用は河川の効果的な運用方法だが、重要なのはみんなで行うことで、一人だけ実行しても、残った魚は他の釣り師 にすぐに釣りきられてしまいほとんど効果はないだろう。キザなやつとか、西洋かぶれとか、ネギ背負ったカモとせせら笑われてもしょうがないと思う。

しかし、一般の渓流でも、私のように楽しく余裕を持って釣りをするためのC&Rという考え方だってある。C&Rの経験のない方は一度試 してみてはどうだろう。きっと釣りという行為を純粋に楽しむ余裕が出ると思う。

そして、愛らしい宝石のような小さな命を一つ救ったという、
ちょっとした満足感のおまけが付くかもしれない。