アオサギの昼寝
へび
アクシデンド
トビとアマゴ
ねこが釣れた
思い出の谷
欲張りなアマゴ
鉄砲水
痛くない話




渓流を釣り歩いていると、よく蛇に出くわす。水際はエサのカエルが多いし、朝の冷え込みで下がった体温を、 岩の上で温めていることもある。水際でそんな蛇に出くわしたとき私は、手で水をかけ追い払うことにしている。 たいてい少し水をかけただけで慌てて逃げていく。

その日も水際の石の上でとぐろを巻いている蛇に出くわしたので、いつものように水をかけた。すると蛇は振り向きざまに、 噛みつこうとした。ぱくっと開いた白い口の中がはっきり見えた。 そして鎌首持ち上げ三角形の頭でこちらをにらみつけた。距離はわずか1.2m。背筋が凍る思いがした。 私はバネのように飛び上がり川に飛び込み、いちもくさんに走って逃げた。 腰近くの深さで服が濡れたが、かまわず全速力で走った。そして対岸にたどり着くと、拳位の石を拾い蛇に向かっていくつも投げた。 おもいっきり投げた。石が当たったかどうかは判らないが、蛇は藪の中に消えていった。 石を投げる必要などなかったのだが、その時は気が動転して無我夢中だった。

用心のため、蛇が逃げた茂みを20m程迂回して再び釣り始めたのだが、その日はそのことが気にかかりあまり釣りにならなかった。 全体が灰色っぽくて1m近い長さの蛇だったが、日本で毒蛇といえばマムシかヤマカガシで、両方とも、もっと短くて赤っぽい色をしているはずだ。 大きさはシマヘビ位なのだが、縞はなかったし、頭が三角形の攻撃的なシマヘビなんて見たことがない。 あれはいったいなんて言う蛇だったのだろう?