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葉ギリ

和竿の玉口(メス側継ぎ手)を作るために竹の穴の内側を広げるときに使う竹用のキリを葉ギリと呼ぶ。和竿師は0.1〜0.3mm間隔で 少しずつ大きさの違うキリを使って、竹の穴を広げて目的の玉口のテーパーを作る。ドリルの刃を使うこともできるが、ドリルの刃は回している最中に熱を持 ち、竹に食い込で捻れて割れてしまうトラブルが多い。葉ギリを使った方が遙かに早く楽に作業ができるが、特殊な工具なので市販されて いない。作り方はそれほど難しくないため自作する方法を紹介したい。

必要なもの


鋼材

直径3〜5mm以下はピアノ線、それより太い鋼材は焼きが入ってなく柔らかいSKロット鋼が扱いやすい。2mの寸法で売られているので 葉ギリに必要な 10〜20cmの長さに切る。鋼線の太さは葉ギリの刃が完成時鋼線の直径の1.5〜3倍の大きさになるのを目安に決める。

鋼材

金床

熱した鋼線を叩いて延ばすための金属の台。私はホームセンターで売っていた鉄道用レールを切ったものを使っている。

金槌

大工仕事で使うより少し大きめのものが使いやすい。

七輪熱源

私は七輪を使っているが、直径5mm以下の鋼線で加工する数が少ない場合はカセットガスのトーチで代用可能

ふいご

炭火の温度を上げるために使う。ヘアードライヤーで代用可。

備長炭に特性が似ていて、安いオガ炭をつかっている。バーベキュー用の南洋材の炭は着火は早いが火持ちが悪い。

オガ炭


グラインダー

延ばした刃先を削って整える


作り方


鍛造

鋼線を必要な長さにカットしたら、延ばしたときに刃の形になりやすいように鋼線の先端をグラインダーで削り先端を尖らせてから、炭火の 中に突っ込み先端が真っ赤になるまで熱する。七輪だと鉄の組織がオーステナイトに変化する730℃以上の温度まで上がらないため、七輪の空気 取り入れ口にふいごを使い空気を入れる(なければヘアドライヤーで代用可能)。熱した先端を金床の上で叩いて延ばす。温度が下がれば再び炭火で熱し、先端 が直径の2〜3倍に広がるまで繰り返す。



鍛造

焼きなまし

延ばし終わったら常温でゆっくり冷やし て焼きなましを行う。

焼きなまし

刃先の整形

焼きなましを行った部分は柔らかく自由に曲がるので、ペンチで刃が左右対称になるよう曲がりを直しグラインダーで削って形を整える。刃 の形は節抜きに使う三角錐 の剣先型、紀州のヘラ竿師がつかう柳葉型、その中間の2段テーパー型の3種類がある。

剣先型

剣先型

削るときの抵抗が少ないが、削り面が少し粗くなるので、節抜きに向いている。

柳葉型

柳葉型

削るときの抵抗が少なく、滑らかに削れるが、左右が正確な対称でないといびつな穴が開いてしまうため、作るのが難しい。

2段テーパー型

2段テーパー型

側面を少しずつ目的の直径まで削っていけるので作りやすい。削り面も滑らかだが、2段テーパー部分を長くしすぎると竹に噛 付きやすくなる。


刃先は軸の中心に対して左右が正確な対称になるように整形する。中心がずれると、削るとき振動が発生して削る穴が真円にならない。左右 の対象は目で見ても良く判らないので、私は葉ギリをドリルにセットして回しながら刃先をグラインダーに当てて削り、音で判断している。 左右非対称だと「ガッガッガ」と断続音だが左右対称になると「ガガガ」の連続音に変わる。


焼き入れ

刃先を整えたら、刃先が真っ赤になるまで(730℃以上)に熱して、油の中に入れ焼き入れする。油は揚げ物で使った廃油でよい。

研ぎ

ヤスリ、砥石で刃先を研ぐ。適当な竹で削り具合を試して、


焼きならし

焼きいれした鉄の組織は内部にひずみがあり硬く脆いので折れやすい。暗闇でぼんやり赤くなる程度の温度(石油ストーブの上等)でしばら く熱してから冷や し、鋼に粘りを出す


熱処理の話

鉄を熱して温度が727℃を超えると鉄の組織がオーステナイトという状態に変化を 始める。オーステナイトの状態は柔らかく、叩いたり延ばしたり加工しやすくなる。 この状態の鉄をゆっくり冷やすとパーライトと呼ばれる組織の柔らかい鉄 になり、急激に冷やすとマルテンサイトと呼ばれる針状の細かい組織の 硬い鉄になる。727℃で鉄の組織が変化するポイントを金属工学では変態点(A1)と呼ぶ。

焼き入れを行うと急激な温度変化により鉄の内部にひずみができるためもろくなるが、そのひずみは変態点以下の温度で再加熱することであ る程度取ることができて鋼に粘りが出る。この処理を焼きならしと呼ぶ

「鉄は熱いうちに打て」ということわざを金属工学的に言えば
   
   「鉄はオーステナイトのうちに打て」   または
   「鉄は727℃より熱いうちに打て」   

とより具体的になる。

などとうんちくをたれながら付け焼刃の知識で鍛冶屋仕事をしても腕が伴わない。刃先がいびつになったり、曲がったりで失敗の繰り返 し。それでも何本か叩いていると、少しずつ使えそうなものができるようになった。


関連商品リンク

葉ギリ作りに使うピアノ線は、50cmにカットしたものをこちらで購入することができる。


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